A:過払い部分を返還させることは可能ですが、賃金から過払い部分を控除することは原則できません。
過払い部分の返還について
賃金が過払いされた場合には、使用者から過払いを受けた本人に対する不当利得返還請求権が生じますので、返還を求めることが可能です。この不当利得返還請求は、使用者や給与担当者に過失がある場合でも構わないとされています。
本人が過払いを受けた事実を知らなかった(善意)場合
この場合には、過払い部分だけを返還させることができます(民法703条)。知らなかったことについて本人に過失がある場合を含むとされています。
本人が過払いの事実を知っていた(悪意)場合
この場合には、過払い部分に利息を付けて返還させることができます(民法704条)。ただし、利息は個々の過払い部分ごとに生じるものなので、毎月の過払い額ごとに、それぞれの支給時から利息を計算することになります。
消滅時効
使用者から労働者に対する過払い部分についての不当利得返還請求権の消滅時効期間は原則として10年となる(民法167条1項)と考えられていますが、本人が過払いの事実を知っていた(悪意)場合の損害賠償請求権の消滅時効期限は、3年または20年となる場合もあります(民法724条)。
賃金からの控除の可否
賃金全額払いの原則
労働者の経済生活の安定を確保する目的から、賃金は全額払いが原則とされています(労働基準法24条1項)ので、賃金から過払い部分を控除することは原則できません。
労使協定がある場合
過払い部分を賃金から控除するという内容の労使協定がある場合には、例外として控除が認められます(労働基準法24条1項)。
以上、この他にも例外がある場合もありますので、弁護士等にご相談ください。